こんばんは🍀
言語聴覚士(ST)の田中美穂です。
自閉スペクトラム症をもつ子と話していると
会話・コミュニケーションに関する
”愛すべき珍事件”がたくさん起こります。
なぜ ”愛すべき”と書いたのかと言うと、
本人たちは、悪気なんて一切無く、
ただただ純粋に一生懸命に
会話や課題に取り組んでいるからです。
そうなっちゃう理由がわかっていれば、
多少ヘンテコな場面でも、
その一生懸命さ・真面目さから
とてもかわいらしく見えてくるのです。
その中でもよく見られるのが
「一方通行会話」です。
先日も、こんなことがありました。
🍀小3男子とアラサーST田中の会話🍀
子「先生って子どもいる?!」
ST「え?!突然どうし…」
子「子宮っていう体の一部分があって
女性しかないんだけど、先生あるよね?
そこで卵子が…(略)…」
ST(ん?さっきの質問はスルー??
その知識なら先生も知ってるけどね…笑
一応女性なので、子宮はありますが…笑)
子「精子の数ってすごいねん、なんと一億!
そんでなそんでな、そのうちの…」
ST「ちょっと待って待って。
めっちゃ詳しいなぁ!
そんな情報、どこで知ったの?」
子「先週のNHKスペシャル!見てないの?
んでね、んでね!精子は酸性だと死んで
しまうからアルカリ性の…(略)…」
ST「そうなのか~。見ればよかったなぁ。
ねぇ、A君。質問なんだけ…」
子「先生、まさか見てないの?!驚愕だね!
絶対見るべき!だって、子どもの発生に
関する教育番組だったんだからさ!」
ST「そうかぁ…
ねぇ、質問してもいいかね?」
子「何がわからないの?」
ST「3つほどあるんですが。まず最初に、
なぜ『子どもいる?』って聞いたの?」
子「子どもいないなら、子どもの作り方と
体の仕組みを教えなきゃって思ったから」
ST「それはありがとう。優しいね^^
それで、先生は子どもいるんだっけ?」
子「…聞いてない。いないでしょ?
でさ、双子のメカニズムは…(略)…」
ST(苦笑)
ツッコミどころが多すぎて、何からどう
指導したらよいのやら…(笑)
彼の生殖関連のマシンガントークは
この後もしばらく続き、
双子の発生確率まで発展しました。
STが一旦止めて質問するまでは、
息継ぎをする間も無いほど一気に話し、
番組内容全てを伝えようとしていました。
1時間番組ですよ…(;・∀・)アチャー
NHKスペシャルの情報をSTに話したい!
きっと数日前から準備してきたのでしょう。
一息に全て話しきれるほどに知識は満タン。
準備も満タン。やる気も満タンです。
しかし、彼の目的は
”先生に聞かせる・教えること”
”僕の知識を聞いてもらうこと”でした。
前提に「会話を楽しむ」が無いんですね。
STの質問や相槌など差し挟まなくても
一気に伝えてしまえばいいんです。
そもそも、先生はそれを聞きたいのか?
先生は、その情報を既に知っているか?
アラサー女性に適切な話題なのか?
…そんな事は彼にとっては
微細な問題だったようです(笑)
この背景には、
自閉スペクトラム症を持つ子に多い
以下のようなことが関連しています。
🍀 欲求や感情をコントロールしにくい
🍀 新しい事・わからない事は苦手
(未知の話題では盛り上がれない)🍀 相手の気持ちを汲み取りにくい
🍀 場の空気や雰囲気がわかりにくい
🍀 質問/応答のタイミングがわからない
🍀 言語力の偏りにより、答えられない
会話を楽しむためには、
相手の様子・表情・返答などをくみ取る
対人スキルが必要です。
会話は「キャッチボールのようなもの」と
知った上で、
一方的に剛速球を投げることのないよう、
相手を意識してわかりやすく話すスキルも
必要です。
その上で、内容を臨機応変に変える力や
知識・語彙力も問われるわけですね。
勉強することがいっぱいだぁぁ(>_<)
でも、1つ1つ一緒にがんばろう!!