自閉スペクトラム症の症状「一方的に話す」の理由

2017/10/20 | 知れば納得!症状と理由 シリーズ

こんばんは🍀
言語聴覚士(ST)の田中美穂です。
 
 

 
 
自閉スペクトラム症をもつ子と話していると
会話・コミュニケーションに関する
”愛すべき珍事件”がたくさん起こります。

 

なぜ ”愛すべき”と書いたのかと言うと、
本人たちは、悪気なんて一切無く、
ただただ純粋に一生懸命に
会話や課題に取り組んでいるからです。

そうなっちゃう理由がわかっていれば、
多少ヘンテコな場面でも、
その一生懸命さ・真面目さから
とてもかわいらしく見えてくるのです。

 

その中でもよく見られるのが
「一方通行会話」です。
 


 
 
先日も、こんなことがありました。

 

🍀小3男子とアラサーST田中の会話🍀
 

子「先生って子どもいる?!」

ST「え?!突然どうし…」

子「子宮っていう体の一部分があって
  女性しかないんだけど、先生あるよね?
  そこで卵子が…(略)…」

ST(ん?さっきの質問はスルー??
  その知識なら先生も知ってるけどね…笑
  一応女性なので、子宮はありますが…笑)

子「精子の数ってすごいねん、なんと一億!
  そんでなそんでな、そのうちの…」

ST「ちょっと待って待って。
  めっちゃ詳しいなぁ!
  そんな情報、どこで知ったの?」

子「先週のNHKスペシャル!見てないの?
  んでね、んでね!精子は酸性だと死んで
  しまうからアルカリ性の…(略)…」

ST「そうなのか~。見ればよかったなぁ。
  ねぇ、A君。質問なんだけ…」

子「先生、まさか見てないの?!驚愕だね!
  絶対見るべき!だって、子どもの発生に 
  関する教育番組だったんだからさ!」

ST「そうかぁ…
  ねぇ、質問してもいいかね?」

子「何がわからないの?」

ST「3つほどあるんですが。まず最初に、
  なぜ『子どもいる?』って聞いたの?」

子「子どもいないなら、子どもの作り方と 
  体の仕組みを教えなきゃって思ったから」

ST「それはありがとう。優しいね^^
  それで、先生は子どもいるんだっけ?」

子「…聞いてない。いないでしょ?
  でさ、双子のメカニズムは…(略)…」

ST(苦笑)

 

ツッコミどころが多すぎて、何からどう
指導したらよいのやら…(笑)

彼の生殖関連のマシンガントークは
この後もしばらく続き、
双子の発生確率まで発展しました。

STが一旦止めて質問するまでは、
息継ぎをする間も無いほど一気に話し、
番組内容全てを伝えようとしていました。

1時間番組ですよ…(;・∀・)アチャー
 

 
 

NHKスペシャルの情報をSTに話したい!
きっと数日前から準備してきたのでしょう。

一息に全て話しきれるほどに知識は満タン。
準備も満タン。やる気も満タンです。

 

しかし、彼の目的は
”先生に聞かせる・教えること”
”僕の知識を聞いてもらうこと”でした。

前提に「会話を楽しむ」が無いんですね。

 

STの質問や相槌など差し挟まなくても
一気に伝えてしまえばいいんです。

そもそも、先生はそれを聞きたいのか?
先生は、その情報を既に知っているか?
アラサー女性に適切な話題なのか?
…そんな事は彼にとっては
微細な問題だったようです(笑)

 

この背景には、
自閉スペクトラム症を持つ子に多い
以下のようなことが関連しています。
 

🍀 欲求や感情をコントロールしにくい

🍀 新しい事・わからない事は苦手
  (未知の話題では盛り上がれない)

🍀 相手の気持ちを汲み取りにくい

🍀 場の空気や雰囲気がわかりにくい

🍀 質問/応答のタイミングがわからない

🍀 言語力の偏りにより、答えられない

 

会話を楽しむためには、
相手の様子・表情・返答などをくみ取る
対人スキルが必要です。

会話は「キャッチボールのようなもの」と
知った上で、
一方的に剛速球を投げることのないよう、
相手を意識してわかりやすく話すスキルも
必要です。

その上で、内容を臨機応変に変える力や
知識・語彙力も問われるわけですね。

 

勉強することがいっぱいだぁぁ(>_<)
でも、1つ1つ一緒にがんばろう!!

 


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